看護師のためのトラブルと法的知識

看護師のためのトラブルと法的知識

法律問題にうろたえているという看護師が多いといわれています。

 

なぜなら、医療事故をはじめ、
医療を契機とした不幸な出来事などが多く報道されています。
そして、被害者らが法的手段をてこに
医療に「社会と向き合うよう」にもとめていますが、
医療者がそれに向き合うすべを知りません。

 

これは、コンフリクトマネジメントと呼ばれ、
事故が起こることを前提に、
患者さんや家族とどのように向き合い対話していくかという
コミュニケーションが問題になります。

 

また、医療は「法」と密接に関連しているにも関わらず、
今まで医学・看護教育、臨床の現場において
医療者が法に関する基礎的知識と考え方を
学ぶことを避けてきたということも、
看護師が法律問題にうろたえる原因のひとつであると考えられます。

 

ですから、法律の専門家ではない看護師が、
医療に関連する法律をどのように学んでいくかということが必要です。

(1) 看護師と法律の関係

おそらく、10年ほど前までは、
看護と法律などは無関係であると考えられていたと思います。

 

ですが、現代は、医療・看護と法律が
とても深い関係であるといえます。

 

次にあげる報道は、
現代の社会に生きる私たちすべてに関わる問題です。

 

看護師と内診

 

2006年、医師と助産師にしか法的に許されていない内診を、
看護師に行わせていたという疑いで、
県警がある病院の操作を行いました。

 

これを受けて、厚生労働省も全国の実態調査に乗り出すとのことです。

 

なぜ、内診は医師・助産師に限定され、
看護師が行うのは問題であるといわれたのでしょう。

 

看護師と医療事故

 

2006年、ある病院で男性患者が肺に酸素を送り込むチューブを
食道に誤挿入されて死亡するという医療事故がありました。

 

県警は、20歳代の女性看護師2名を、
業務上過失致死容疑で地検に書類送検しました。

 

この2名の看護師は、事故直後、病院の調査にミスを認めました。
しかし、県警の事情徴収には容疑を否認したそうです。

 

県警は送検にあたり、
「自己保身に走り、この自己を再発防止に役立てようとしていない。」
という意見書を付記し、厳しい処分を求めたそうです。

 

看護師と終末期医療

 

末期がんの患者さん7名が、
人工呼吸器を取り外され死亡した富山県のある病院の延命治療中止問題で、
県警の依頼を受けた専門医が、一部の患者について
人工呼吸器をはずした行為と死との因果関係があるとする
鑑定結果をまとめました。

 

殺人容疑で捜査している県警は、
担当した医師本人の本格徴収も検討していましたが、
当時、延命治療中止に関する国などの明確な指針がないなか、
刑事罰を問うのは難しいとの判断もあったため、
慎重に捜査していたようです。

(2) 看護師の日常業務と法の関係

看護と法の密接な関係は、看護師の日常生活にも直面しています。

 

臨床現場でありがちな例を挙げてみましょう。

 

このような日々の臨床現場で困ったこと、
ひやりとしたこと、法的にどうなんだろう?
という疑問にぶつかったことはありませんか?

 

そして、このようなトラブルや疑問に思ったとき、
どのように対処していますか?

 

@ 患者・患者家族とのトラブル

 

・検診を受けた患者さんが、
検査結果を聞きに来られません。
法的には、どこまで連絡の努力が求められるのでしょうか。

 

・透析管理をしていた患者さんの穿刺針がはずれ、
大量出血となってしまいました。
どのように対処すればよいのでしょうか。

 

・残念ながら死亡事故が起こりました。
ご家族から説明を求められていますが、
死因の説明は、病院や医療者の義務なのでしょうか。

 

A 病院・協働者とのトラブル

 

・病院で医師の指示で医療行為(診療の補助)をしています。
医師から、「抗がん剤の静注」の指示を受けました。
本当に指示通りに対処してよいのでしょうか。

 

・同じ病棟の先輩看護師からいじめに近い扱いを受けています。
先日、ロッカーから私の財布がなくなり、
受け持ち患者さんのベッドの下から出てくるという事件がありました。
どのように対処すればよいのでしょうか。

 

・一日の化学療法の人数を倍にされました。
業務が重なって安全に行うことが無理なのではないかと思い、
上司にその旨を申し入れたのですが、
対応してもらうことができません。
業務の量と事故の責任の関係性は、どのようになるのでしょうか。

 

・肝炎の患者sんの採決を終え、リキャップする際、
誤って自分の指に針を刺してしまいました。
万が一感染などした場合は、病院に責任を問うことは可能ですか?

 

B 看護にまつわる法律知識

 

・手術室で、医師の術中の血管損傷を確認しました。
どこまで看護(手術)記録に記載すべきでしょうか。

 

・警察から電話で患者さんに関する問い合わせがありました。
個人情報に当たると思いますが、答えて良いのでしょうか。

 

・看護教育のなかで、守秘義務を守る倫理観を高めたいと思っています。
以前、学生が実習先への移動中に実習記録を書いたり、
患者さんを話題にしたりして問題になったことがあります。

(3) 実際にトラブルにあった場合の対処法

実際に自分がトラブルにあってしまったときは、
どのようにすればよいのでしょうか。

 

まず、それが法的な問題があることに「気づく」ことが大切です。

 

そして、法的な問題と医療の現場でできること、
医療倫理の問題であることをできるだけ区別することが必要です。

 

ただし、「法的な問題と医療の現場でできること」と
「医療倫理の問題であること」は、重なり合う部分が多いです。

 

法的な問題は、法的に答えがしっかり出るものから、
出ないけれど検討しなければならない場合のポイントがあります。

 

最低限、そのポイントを落とさないようにし、
その上で職場の人とディスカッションするようにします。

 

現代社会で看護師として生きるためには、
法的な思考のプロセスを学ぶことが大切です。

 

そして、法的問題の気づきのためにも、
法的知識、分析の視点を得ることが必要です。

 

このような力を蓄えてこそ、次世代の「自律した看護師」になることができます。