看護師のためのトラブルと法的知識

患者さんが情報提供を拒んだ場合の対応

入院の際など、ほとんどの患者さんに問診票の大半を

記入してもらっていると思います。

 

ですが、空欄が出ることもあります。

 

必要な情報提供を、患者さんに拒まれてしまうと、
先々、看護に支援が出ないか心配になることもあるのではないでしょうか。

 

その際、診療(看護や入院)を拒むことは可能なのでしょうか。

患者さんが、情報を出し渋る理由に寄り添い、
考えることが必要です。

 

診療を拒むことはできないでしょう。

 

@ 個人情報保護の背景

 

個人情報保護法が施行されてから、
医療者は、今まで以上に個人情報保護に神経を使うようになりました。

 

これは、患者さんにとっても同じで、
情報(インフォメーション)の有用性とリスクの両面に配慮する
「インフォメーションマネジメント」という
新しい管理手法の確立を急ぐことが必要です。

 

患者さんが入院するときには、
まず患者さんやご家族から情報を入手することが必要です。

 

ですが、今まで看護者は、
その情報が医療全般(看護)の過程に
どのように活かされるのか、
法の関係でいえば「どのような目的」に使われるのかを
十分に考えていなかったと思います(利用目的の特定)。

 

そして、その多くの情報を、目的も考えず、
決められたままに収集していたこともあったはずです。

 

まず、看護師は、本当に看護過程の遂行に必要な情報であるかどうか、
看護過程の遂行に必要な情報とは何かを考えることが必要です。

 

A 患者さんの情報の出し渋り

 

患者さんが必要な情報の提供を拒んだ場合は、
どのように対応をすればよいのでしょうか。

 

本当に看護過程の遂行に必要な情報であるのに、
患者さんから情報の提供を拒まれてしまったら、
「はい、そうですか」というわけにはいきません。

 

ですが、まずは、出し渋る理由に寄り添うことが必要です。

 

患者さんの情報の出し渋りの理由が、
情報漏えいの懸念からきているものであれば、
情報管理への対応をし、具体的に示すことによって、
懸念を拭い去ることができるはずです。

 

患者さんの独りよがりで、
治療にはまったく不要な情報であると思い込んでいるのであれば、
その情報が患者さんの治療の中で、
どのように使われるのかを患者さんに対し、
十分に説明することが必要です。

 

法的にいうと、患者さんと医療者との関係は、
民法656条の準委任契約です。

 

民法には、明確に「患者(委任者)」の義務は記載されていませんが、
信義則上、委任事務(医療の場合では、診療し、適切な医療等を施すこと)を
遂行するために、必要な情報の提供義務はあると考えられます。

 

 *信義則(民法1条2項、民事訴訟法2条)

 

  信義則とは、信義誠実の原則の略のことです。
  具体的事情のもので、相互に相手方の信頼を裏切らないように
 行動すべきであるという法原則(自分の行為に矛盾した態度をとることは
 許されないといいうもの)」をいいます。

 

  「自ら不法に関与した者には法的な救済を与えないクリーンハンズの原則、
 社会的事情に変化があれば、契約意の内容はそれに応じて変更される
 事情変更の法則」などを含みます。

 

 

このケースのように、情報提供に協力してもらうように努力をしても、
患者さんが情報の提供を拒んだ場合は、
その情報がないことによって、確実な治療ができないなど、
患者さんが被る不利益を医療者である受任者側に求めることはできません。

 

また、過失相殺されることになってしまいます。

 

 *過失相殺(民法418条、民法722条)

 

  債務の不履行または不法行為によるう損害賠償において、
 債権者や被害者にも過失がある場合、その事情を考慮し、
 損害賠償の責任を免除し、もしくはその金額を減額することをいいます。

 

 

民事上では、このようなルールがあります。

 

ただ、情報の提供を拒絶されたことをもって
診療をこばむことができるかどうかは、
医師法19条の応召(招・需)義務を免除する
「正当な理由」といえるかどうかは疑問です。

 

まずは、看護師は、医療者としてすべきことをすることが大切です。

 

医療は、患者さんの協力がなければ達成できないことが多く出てきます。
そして、患者さんの医療への参加が必要になってきます。

 

いずれ医療法や医療系法に、患者さんの協力義務を
記載することが検討される日が来るかもしれません。

 

とはいっても、医療者の義務を軽減するものではありませんが。

 

患者さんが、安心して情報を提供することができるような信頼関係が、
医療者側と患者さんとの間で築くことができるような努力をしたいですね。