看護師のためのトラブルと法的知識

相部屋患者さんのプライバシー問題の対応

大部屋の患者Mさんは、

「看護師Yさんは、排泄のことなどを大きな声で聞いてくるので、
ほかの患者さんに筒抜けで恥ずかしい。」と怒っています。

 

看護師Yさんは、「特に声が大きいというわけではない。
病院の大部屋なのだから、そのくらいは仕方がないと思ってほしい」
と思っています。

 

このような場合には、どのように対応すればよいのでしょうか。

両者の考えには、それぞれ一理あります。

 

ですが話し合うことで解決を目指し、
できない場合は、病院内などのサポートを仰ぎましょう。

 

@ 病院内でのプライバシー

 

病院内でのプライバシーは、
犠牲にしなければならないのでしょうか。

 

プライバシーと個人情報の保護は必ずしも一致しませんが、
ここでは同義で考えることにします。

 

このケースでは、患者のMさんと、看護師Yさん両者の
病院内でのプライバシーに対する考え方に食い違いがあります。

 

現実の大部屋では、
多少のプライバシーが制限されることは仕方がないという
看護師Yさんの言い分はもっともだといえるでしょう。

 

ですが、病室は決して当然には公的空間とは言えず、
いわば指摘な空間が複数あると考えるべきでしょう。

 

患者さんの立場から見れば、
病院に入ったからといって
プライバシーが犠牲にされるのはおかしいという気持ちも理解できます。

 

しかも、医療に関する個人情報は、
いわゆるセンシティブ情報として、
できる限り関係のない第三者に知られないように保護されるべきです。

 

 *センシティブ情報

 

  保健医療情報は、個人情報の中でも
 より高度な保護と配慮が必要とされるセンシティブ情報に分類されます。

 

  その典型が遺伝情報です。

 

  ほかにも、家計情報、性生活、生まれ育ちなども
 同じように分類されています。

 

 

A 対応のステップ

 

対応のステップとしては、まず、第一段階として、
看護師Yさん自身が、
患者Mさんが不満を持っている事柄の改善の可能性について、
Mさんと直接話し合うことが必要です。

 

このケースのように、
排泄の関して看護師が問うことに不満を感じているのであれば、
たとえば、排泄表をつくり、時間、回数、その様子などを
あらかじめMさんに書いてもらうようにするなどです。

 

お互いがフランクに話すことができると、
解決策は案外簡単に編み出すことができるかもしれません。

 

ですが、両者の冷静な話し合いが困難な状況になっている場合もあります。

 

その場合は、第二段階として、周囲のスタッフを交え、
臨床現場に近いところで個別の倫理的問題の検討会を
持つなどすると良いのではないでしょうか。

 

臨床での倫理問題を分析する手法には、
すでに先行的な工夫があります。

 

 ●臨床での倫理問題を分析する手法とは

 

 たとえば、以下のように分けて考えるJonsenらの4分割法等があります。

 

 1) 医学的適応
 2) 患者の意向
 3) QOL
 4) 周囲の状況

 

 稲葉一人ほか「機能する病院内臨床委員会-倫理指針構築の場・
 倫理教育の場としての期待」、「看護管理」13(4)、
 医学書院を参考にしてみてください。
B 倫理的問題に気づく能力

 

このケースの場合のような、倫理的問題の解決には、
まず、各現場レベルでの小規模な活動からスタートし、
将来的には組織的にそのような活動をする支援する、
たとえば、看護部の倫理委員会のようなシステムを作り、
更に、臨床からの代表者で構成される病院内臨床委員会を作ることを
目指してみてはどうかと思います。

 

現状の臨床現場では、このようなケースは
「些細な」ことだと思う看護師も少なくないかもしれません。

 

ですから、このような些細なプライバシーの問題を、
倫理的問題として検討するのは大げさなのではないかと
疑問に思う看護師もいるでしょう。

 

ですが、これも、大きく倫理に関わる問題です。

 

医療の問題は、法的な問題というよりも、
倫理的な問題が圧倒的に多いです。

 

倫理的問題と聞くと、先端医療に関連した
「脳死」、「臓器移植」、「出生前・遺伝子診断」、
「遺伝子治療」、「終末期医療」にかかわる「がんの告知・鎮静」、
「安楽死」、「尊厳死」などを思い浮かべるでしょう。

 

ですが、医療や看護は、個別の患者さんや家族と向き合う作業の中で、
日常的にいろいろな倫理問題に直面しています。

 

インフォームドコンセント、
慢性期における医療や看護の方針についての
医療者・患者家族間の意思疎通、
医療者間、医療者・患者家族間のコミュニケーショントラブルなどは
すべて倫理的問題に属します。

 

患者さんやご家族からのクレームは、
倫理的問題の気づきのきっかけと考えることが大切です。

 

ちょっとおかしいなと思うことこそが、
看護師としての健全な倫理感覚ではないでしょうか。