看護師のためのトラブルと法的知識

暴力を振るう患者さんへの対応

硬膜下血腫で入院中の高齢の男性患者さんで、

視力低下と難聴があり、物忘れをします。

 

食事用にナイフを持ち込んだのですが、
病室保管はできないため、
家族に持ち帰ってもらいました。

 

本人はそのことを忘れてしまい、
それを指摘すると、「馬鹿にするのか、殺してやる。」
と杖を振り上げ、対処に困ってしまいます。

 

このような場合の対処は、どのようにすればよいのでしょうか。

このような暴力を振るう患者さんへの対応は、
いくつかの場面にわけ、チームで対応することが必要です。

 

看護師一人で対応しないようにしてください。

 

@ 患者さんが原因となったトラブル

 

患者さんが原因となったトラブルが目に付きます。

 

また、そういったトラブルは、報道でもよく耳にしたり目にしたりします。

 

そのような中で、患者さんからいわれのない
攻撃的言動を受けたことがある看護師は、
相当多いのではないかとおもいます。

 

このようなことによって、看護師自身が傷つき、
トラウマとなり、
その後の対人関係全般に問題を残すことも指摘されています。

 

このような「攻撃的言動」には、「他外行為」、「攻撃行為」、
「暴力行為」、「暴言」などがあります。

 

また、患者さんが自分に向ける「自傷行為」も含みます。

 

まずは、場面をいくつかに分類してみましょう。

 

 1) 成人患者が故意に攻撃的言動を引き起こす場合。
 2) 病院外でのトラブルを病院内に持ち込んだ結果、
   攻撃的言動を引き起こす場合。
 3) 認知症などの病気を背景に、攻撃的言動が引き起こされる場合。

 

このような場面が考えられますが、
1)の場合は、攻撃が警備な場合は別として、
病院が対応する、ないしはできる問題ではありません。

 

また、2)の場合も同じで、病院が対応できるものではないでしょう。

 

むしろ、医療従事者やほかの患者さん、訪問者の安全を考え、
早期に顧問弁護士や警察などの法的期間に相談したり、
通報したりすべき場面です。

 

手をこまねいていると、かえって大きなトラブルに発展してしまいます。

 

3)の場合は、対応は難しいと思います。
しかし、今後、高齢化社会が進み、
このような事例は多く生じるようになるでしょう。

 

今回のケース、高齢者の患者さんが物忘れをし、
ナイフを家族が持って帰ったことを忘れて、
看護師に暴力を振るうというようなことは、
3)に当てはまる場合だと考えられます。

 

認知症の患者さんへの対応は、
医学的対応だけではなく、喪失感など
心の問題を支えること、
そして、暮らしの不自由さも支えることが必要です。

 

医療現場で、看護師がこれをすべて行うことには限界があり、
他領域の職種との協力も必要です。

 

A 暴力を振るう患者さんへの対応のポイント

 

1) 看護師は、患者さんの攻撃に接すると、
  自分の接し方に問題があると思ってしまうことが多くあります。
   しかし、これは、場合によっては、
  患者さんの攻撃を増幅させてしまうことになります。

 

2) このような攻撃は、看護師が一人で対応しているときに
  発生することが多いです。
   つまり、看護師と患者さんが1対1のとき、
  患者さんの甘えから抑制が効かなくなっていたり、
  看護師自身がきちんと対応する余裕がないことが
  原因であると考えられます。

 

3) 患者さん特有のパターンがあるという指摘もあります。
   時間帯や場所について、あるパターンが見られる場合は、
  それを事前に察知して対応することが必要です。

 

 

しかし、さまざまな工夫をし、対応したとしても、
看護師自身が現実に危険を感じる場合は、
看護の前提を欠く状態となったと考えるべきです。

 

現実に事故が発生すると、
患者さんにとっても、被害者にとっても、
大きな傷を残すことになります。

 

ですから、専門医らと協議をし、
施設移転も含めた対応を考えることになります。

 

このような事態に備え、
「問題患者対応マニュアル」を作成している病院もあります。

 

しかし、このような問題は、
患者さんの人権との折り合いをつけることがなかなか難しい問題です。

 

ですから、慎重に取り組むことが必要です。

 

そして、患者さんからの攻撃的言動は、
医療のシステムにおける問題でもあることを忘れてはいけません。

 

ひとつひとつの言動に、その場限りの対応をして事を済ますのではなく、
背景となっている原因などを丁寧に分析することが必要です。

 

その上で、どう対処するのかを考え、
院内で共有していくことが大切です。