看護師のためのトラブルと法的知識

輸血の同意がとれない場合の対処方法

交通事故で重態の患者さんが入院していますが、

意識状態を見ている状態で、輸血が必要となっています。

 

しかし、家族構成が複雑で身内の方がおらず、
輸血の同意がとれません。

 

婚約しているという人はいるのですが、
どうすべきなのでしょうか。

同意の順序を考えます。

 

同意の順位としては、
1) 本人の(明示の)意思。
2) 本人が意思表示できない場合は、代諾者の意見等を踏まえ、
  患者さんの推定意思による。
3) 代諾者がいない場合は、医療者が本人にとって最善のケア(利益)
  は何かを考えて判断する。
というようになっています。

 

@ 輸血と本人の同意

 

輸血は一種の臓器移植ともいえます。

 

また、広義の侵襲を伴う行為であるとも考えられます。

 

「エホバの証人」事件を持ち出すまでもなく、
同意がなければ、傷害(刑法204条)となる可能性があり、
民法では、709条の不法行為になる可能性があります。

 

 *エホバの証人事件では、輸血を受けるかどうかに関する
 患者の利益・権利を、人格権の問題としています。

 

 *刑法204条(傷害)

 

  人の身体を傷害した者は、10年以下の懲役
 又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

 

そこで、同意の順序を考えて判断することになります。

 

同意の順序とは、
 1) 本人の(明示の)意思。
 2) 本人が意思表示できない場合は、代諾者の意見等を踏まえ、
   患者さんの推定意思による。
 3) 代諾者がいない場合は、医療者が本人にとって最善のケア(利益)
   は何かを考えて判断する。
というものです。

 

 *代諾者

 

  国の倫理指針等では、代諾者とは、以下のように定められています。

 

  1) 任意後見人、親権者、後見人や保佐人が定まっているときはその人。
  2) 提供者本人の配偶者、成人の子、父母、
    成人の兄弟姉妹若しくは孫、祖父母、
    同居の親族又はそれらの近親者に順ずると考えられる人。
A 輸血の同意がとれない場合の対応のヒント

 

このケースの場合は、「家族構成が複雑」という点があります。

 

医療者は、まず、その家族構成が複雑な部分をほぐす努力が必要で、
代諾者となる人の同意をどのようにしてとるかということが問題です。

 

家族へのがんの告知の問題について判断した
平成14年9月24日の最高裁判決では、
「患者等に対して患者の病状等を告知すべき義務の違反があった」
としています。

 

この判例を参考にして考えると、
まず、医療者として必要なのは、以下のようなことではないでしょうか。

 

 1) 連絡が容易な患者の家族と連絡をとる。
 2) 同意を得られる場合は得て処置をする。
 3) 同意を得られない場合は、輸血は専断的な医療行為なので、
   慎重に行う必要がある。

 

厳密に、早急に輸血をしないと
死につながるというような緊急性までは不要であっても、
準緊急行為的な要件があれば、
刑法35条により輸血は可能であると思います。

 

 *準緊急行為的な要件とは

 

 1) 患者が今意思表示をすると輸血を希望すると考えられる(推定的意思)。
 2) 輸血をしないと患者の生命や身体に影響が生じる恐れがある。
 3) 代替的手段がない。
 4) 事前に医療機関者で競技をしている。

 

このような場合に備え、院内に
倫理委員会や倫理コンサルテーションの部門を設けておくと良いでしょう。

 

 *刑法25条(正当行為)

 

 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

 

そして、これら検討の過程と患者さんなどへの接触の過程は、
記録し、文書化しておく必要があります。

 

このケースの場合のように、家族にうまく接触できないとき、
婚約者がいるのであれば、同意書をとっておくことは無駄ではありません。

 

ただし、それですべてOKというわけではありませんが、
医療者としてどれだけ同意を得るために努力したかが問われたときのために、
さまざまな努力のプロセスは、記録とどめておくことが重要です。

 

緊急行為の場合は、家族の承諾は事後でもかまいません。

 

事後でも良いということは、
承諾が取れなくても仕方がないということでもあります。

 

その緊急性のレベルが問題になります。

 

救急のように、1分1秒を争う場合から、
数日の余裕がある場合など、緊急性には幅があります。

 

その幅の中で、
医療者は家族や本人にどう接し、
どのように努力をしたのかが重要です。

 

努力の結果は、必ず記録しておくことが必要です。