看護師のためのトラブルと法的知識

死因の説明

残念ながら死亡事故が起こってしまいましたが、

ご家族から説明を求められています。

 

ご家族への死因の説明は
病院や医療者の義務となっているのでしょうか。

家族へ死因の説明をすることも、
病院や医療者の法的義務です。

 

@ 法的な視点

 

患者さんが医療の過程で亡くなった場合の説明(死因の説明)は、
医療側の義務なのでしょうか。

 

平成10年2月5日、東京高裁の判決は、
「医療行為が高度に専門技術的な性質を有する行為であること、
そのような医療行為を提供する医療機関に寄せる患者、
および配偶者と子ら近親者の期待や信頼、
そして、患者に施行した医療行為の内容や患者が死亡した時点においては、
当該医療機関のみがこれをよく知りうる立場にあること、
したがって患者の死因についても、
当該医療機関がもっともよく知り得るたちばにあるということなどを考えると、
医療機関においては、死亡した患者の配偶者、
および子ら遺族から求めがある場合は、
信義則上、これらの者に対し、
患者の死因について適切に説明する義務を負う。」としています。

 

法的には、診療契約は、「(成人)患者と病院開設者」との
準委任契約です。

 

そして、この準委任契約は、民法653条により、
いっぽうの死亡によって終了するので、
説明義務の法的根拠を何に求めるのかについては、
学説上争いがあります。

 

しかし、この判決のように、
家族(遺族)への説明義務はあると考えるのが通常です。

 

A 不正確な説明

 

医療紛争となった原因を分析してみると、
医師らの説明が「事実関係が不明」、「過失は明白ではない」、
「説明している合併症が出現した」ことなどが背景になっています。

 

そして、遺族に対して十分な説明がされず、
時に不適切な発言をすることによって不信感を招き、
紛争を生じさせているようです。

 

以下の広島地裁判例(平成4年12月21日判決)は、
不正確な発言・説明が損害賠償を基礎付けると判断した
注目すべき判決です。

 

 *広島地裁判例(平成4年12月21日判決)

 

『自己が診療した患者が死亡するに至った場合、
患者が死亡するに至った経緯・原因について、
診療を通じて知り得た事実に基づき、
遺族に対し適切な説明を行うことも、
医師の遺族に対する法的な義務であるが、
あくまで診療に携わったことを契機とする
付随的義務としての性格を有し、
その説明内容の正確性等について
過度の要求をすることは妥当ではないが、
少なくとも医師の基礎的な医学上の知識の欠如等の
重大な落ち度によって、
患者の死亡の経過・原因についての誤った説明が行われた場合には、
この点について医師に不法行為の過失があるというべきであり、
・・・医師の賠償すべき損害の中には、
誤った説明によって遺族の受けた精神的苦痛が
法的に見て金銭的な賠償を相当とする程度に

重大なものである場合における慰謝料も含まれる。』

 

B 実践的な指針

 

実践的な指針を以下のように示します。
紛争を予防するための参考にしてみてください。

 

 1) 死因の説明を、法的義務(倫理的義務でもあります)としてとらえ、
   家族からの要請がある前でも、医療者側からの説明を積極的に行います。

 

 2) 説明は、正確に、そして丁寧に行います。

 

 3) 説明の内容、程度は家族の要望に応じて、
   ときに「医師の診療上の義務(医療法1条の4第2項)違反」にまで
   及ぶことがあるので注意しましょう。

 

このような指針を踏まえ、その上で、
医療者が患者さんや家族に「うそをつかず、
正しいことを包み隠さずお話しする。」ために、
どのようなことが大切なのかということを
職場の皆さんで話し合うことも必要です。

 

 *医療法1条の4第2項

 

  医師、歯科医師、薬剤師、看護師、その他の医療の担い手は、
 医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、
 医療を受けるものの理解を得るように努めなければならない。