看護師のためのトラブルと法的知識

振り返りの記録の訴訟への影響

75歳の入院患者のMさんが、

食事中に食べ物をのどに詰まらせ亡くなるという事故があり、
意足から病院を被告とする民事裁判が起こされました。

 

現在、審理中です。

 

Mさんの嚥下障害の有無や誤嚥しやすい病院食だったのか、
監視義務を怠ったのかどうかが争点になっているとのことです。

 

当時、Mさんの看護に当たっていた看護師は、
事故後の看護記録(退院時看護サマリー)に
「食事中の行動の観察を十分に行う必要があったものと考えられる。」
と記載したのですが、これは訴訟の結果に影響を与えるのでしょうか。

訴訟の結果に影響を与えるかどうかについては、
過度に心配する必要はありません。

 

ですが、今後は後から誤解を招かないような記載を
心がけることが必要です。

 

@看護記録の書き方

 

看護記録の書き方は、開示を前提とした記載をすることが必要です。

 

医療関係者からは、「どのようなミスがあれば、
法的責任を問われるのでしょうか。」という質問が以前は多かったのですが、
最近は、このケースのように、
看護記録の書き方等に関する質問が多くなっています。

 

法的問題がより具体的で身近な問題になってきたことの
現れだと思います。

 

看護記録は、裁判では当然提出されるものです。

 

また、個人情報保護法施行後は、
紛争がなくても開示をしなければなりませんし、
看護記録は、「開示を前提とした記載」が必要です。

 

このケースの場合のような記載は、
原告である遺族からすると、
看護師が監視義務違反を自認(認めた)したように映るでしょう。

 

ですが、裁判での監視義務の判断は、
原告被告から出された証拠に基づく細かい事実認定の積み重ねによって、
過失の有無が慎重に判断されますから、
裁判官は、表記の記載だけで判断を下すことはありません。

 

過去の裁判でも、看護記録に書かれた看護師に「振り返り」について
取り上げられたことはあります。

 

たとえば平成13年11月28日判決の富山地裁の判例を見ても、
「この記載は、「退院時看護サマリー」と題する書面への記入であり、
看護師が患者の退院後、看護状況等を振り返って
反省点等を記載したものと認められる。
そうすると、そのような記載があることをもって、
記載された内容の注意義務があったものと
認めることはできないし、
また、注意義務違反を自認したものということもできない。」
としています。

 

ですから、このケースの場合も、記載に関して、
過度に心配する必要はありません。

 

A 配慮のポイント

 

療養上の世話関連の民事訴訟もあります。

 

高齢者の食事中のに代表される「療養上の世話」においても、
転倒やベッドからの転落など、多くの危険性があります。

 

つまり、危険行為は、診療の補助だけではありません。

 

また、看護師が記載した記録が紛争の種になることもあります。

 

だからといって、「事故後の振り返り」をしてはいけないということではありません。

 

むしろ、看護記録に何を書き、事故報告書がヒヤリ・ハット報告に
何を書くのかをしっかり意識する必要があります。

 

仮に看護記録に、このケースのような「振り返り」を書く場合は、
平成13年11月28日判決の富山地裁の判例のように、
理解してもらうことができるよう、
十分に注意して記載する(事実を継時的に、かつ評価と区別して書く)ようにする
必要があります。