看護師のためのトラブルと法的知識

ヒヤリ・ハット報告で責任追及される可能性

ヒヤリ・ハット事例を国に報告することになりました。

 

ですが、これらの書面を提出した場合、
個人の責任を追及される恐れはないのか心配になります。

通常、報告が外部に出ることは想定されません。

 

また、それを根拠に個人が責任を追及されることも
想定されにくいと思われます。

 

@ ヒヤリ・ハット事例収集事業

 

厚生労働省は、大学病院をはじめとする特定機能病院を対象に
2003年8月28日通達(医政発第0828004号、薬食発第0828006号)で、
その後、全医療機関を対象に
2004年3月30日通達(医政発第0330008号、薬食発第0330010号)によって、
医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハット事例収集事業)を
開始しました。

 

ヒヤリ・ハット事例収集事業の報告となる事例は、以下のとおりです。

 

 1) 誤った医療行為などが、患者さんに実施される前に発見された事例。
 2) 誤った医療行為などが実施されたが、
   結果として患者さんに栄養を及ぼすに至らず、
   具体的な実害を生じなかった事例。

 

A 患者さんや行為者の特定との関係

 

厚生労働省が示している報告様式には、
患者さんの名前は記載されません。

 

ですが、事故の日付、性別、年齢などから、
まったく特定ができないとはいえないかもしれません。

 

情報の収集に当たっては、患者さん、
医療従事者または報告書等の個人を特定しうる情報は
対象としませんし、
収集した情報について、
具体的な医療機関名が明らかになることはないといわれています。

 

その意味では、ヒヤリ・ハットの報告内容は、
場合によって患者さんや行為者の個人が特定される情報となる余地がありあmす。

 

その場合は、患者さんや行為者個人への開示の対象(個人情報保護法25条)
となる余地はあります。
ただし、病院の業務の適正な実施に
著しい支障を及ぼす恐れがあるとして、
開示しない場合もあります。

 

提出されたヒヤリ・ハット情報から、
行為者の特定が可能になり、
その結果ミスが公にされることが絶対ないとは言い切れないかもしれません。

 

ですが、ヒヤリ・ハットとは「患者さんに深刻な実害が出なかったもの」をいいます。

 

ですから、これを根拠に法的責任を問われることはないでしょう。

 

したがって、ヒヤリ・ハット報告で法的な責任を追求される等の問題まで
心配する必要はないと思われます。
B ミスから学ぶという考え方

 

「ミスから学ぶ」という考え方が、
現在の医療における安全確保の動きの柱となっています。

 

これには2つの流れがあります。

 

 1) 患者さんの診療・ケアにおいて本来あるべき姿から外れた行為
   (プロセス)に着目したインシデント(=ヒヤリ・ハット)への対策。

 

 2) 望ましくない事態の発生(アウトカム)に着目した
   アクシデント(=医療事故)への対策

 

この二つの流れへの対策が必要です。

 

ですが、事例の収集・分析方法はまだ確立されていません。

 

インシデントとアクシデントでは、
情報の社会的価値が異なります。

 

もし、ヒヤリ・ハット事例収集と同じ方式で行うと、
行為者の特定が可能になります。

 

そして、ミスが公表され、ひいては責任の追及の可能性があるからです。
この方法は、更に検討を重ねる必要があるでしょう。

 

 

 ●医療安全対策関連の用語

 

 アクシデント: 通常、医療事故に相当する用語として用います。
         同義として「事故」を用います。

 

 インシデント: 日常診療の場で、誤った医療行為などが
        患者さんに実施される前に発見されたもの。
         誤った医療行為などが実施されたが、
        結果として患者さんに影響を及ぼすに至らなかったもの。
         同義として「ヒヤリ・ハット」を用います。

 

 医療事故: 医療に関わる場所で医療の全過程において発生する
      人身事故一切を含みます。
       医療従事者が、被害者である場合や、
      廊下で転倒した場合なども含みます。

 

 医療過誤: 医療事故の発生の原因に、医療機関・医療従事者に
      過失があるものをいいます。