看護師のためのトラブルと法的知識

家族の介助中の転倒、責任は誰に?

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)で入院中の75歳Mさんが、

看護師Yに許可を得て、家族の介助のもと老化を歩行中、
手すりをつかみ損ねて転倒。
大腿骨骨折となってしまいました。
このような場合、病院や看護師に責任はあるのでしょうか。

家族の介助中であったことは、
看護師の免罪符にはなりません。

 

@ 病院が責任を負う場合とは

 

民法717条により、手すりに瑕疵(かし)があった場合は、
病院が工作物責任を負います。

 

病院施設は、高齢者や身体に疾患を有する人が
多数生活しているところです。
そして、仮に転倒すれば、
骨折等の傷害を引き起こすことが多いと考えられています。

 

手すり等は、通常の施設に比べ、
より利用者にとって安全なものが求められます。

 

手すりが手の力の弱っている人にもいつかみやすくなっていたのか、
滑りやすくなかったのかなどが、判断の決め手になります。
 *瑕疵(かし)とは、
 「その工作物が通常有すべき安全性を欠いている」事をいい、
 過失があることを要件とはしません。

 

 「通常有すべき安全性」は、
 その構造、用法、場所的環境、および利用状況等を
 総合的に考慮し、判断することになります。

 

A 看護師が責任を負う場合とは

 

このケースの場合の看護師Yの責任はどうなのでしょうか?

 

患者Mさんの転倒が容易に予見され、
看護師が適切な配慮をしていれば転倒を避けることができた場合は、
民法709条により、過失責任を追及されることはありえることです。

 

そして、この場合は、民法715条により、
雇用者である病院も使用者責任を負うことになります。

 

どんな場合に過失があるかは個別事案によってさまざまですが、
患者のMさんが、今までにも歩行中に
しばしば転倒しかけたことがある場合(いわゆるヒヤリ・ハット)うあ。
疾患等の影響から手の握る力が極端に低下していて、
介助をしてもまだ歩行や、歩行訓練をすることが無理であると
考えられたような場合(予見義務)、
看護師が付き添って適切な介助をすることや、
歩行を避けることによって事態を防ぐことができたような場合(回避義務)には、
過失が認められることが多いでしょう。

 

 *過失(予見義務と回避義務)

 

  過失は、「転倒という結果」の予見を
 すべきである(予見義務)にもかかわらず予見をしなかったこと、
 また、転倒の回避をすべきである(回避義務)にもかかわらず、
 回避の措置をとらなかったことという、
 異なるレベルの義務違反によって抗生されています。

 

  どのような場合に予見義務があるかは、
 看護師が当時、その患者さんの全体症状を把握し、
 転倒の危険が十分にあると判断できるかによります。

 

  また、どのような回避措置をとるべきかについても、
 その患者さんの能力や物的、人的資源等に応じて異なります。

 

 

B 家族が介助中であったことの影響

 

家族は患者さんに対して、適切な介助ができるとは限りません。

 

ですから、家族の介助中であったことは、看護師の免罪符にはなりません。

 

ただし、このケースの場合は、被害者の側にも過失があったとして、
民法722条により、過失相殺(損害賠償が減額されること)が
なされる可能性があります。

 

不幸にも、このような事態が起きてしまった場合は、
病院側として、以下のような対処をする必要があります。

 

 1) いつ、どこで、どのような態様で、
   どのような事態が生じたのかを、すばやく調査すること。 

 

 2) 担当の医療者から、患者の当時の歩行能力、
   歩行目的や看護状態について事情を聞くこと。

 

 3) 本人や家族に、迅速・丁寧に説明すること。

 

特に、「本人や家族に、迅速・丁寧に説明すること」では、
「どう説明するか」がとても重要です。

 

説明のしかたいかんによって、事故が紛争になることもありますし、
紛争が訴訟になることもあります。

 

特に初期の説明がポイントになり安栖。

 

日ごろから事例を基に、説明の模擬訓練をしておくと良いと思います。