看護師のためのトラブルと法的知識

抗がん剤静注の指示を受けたときの対応

乳がん患者のMさんに、

抗がん剤の点滴治療が開始されることになりました。

 

主治医から看護師に点滴静脈注射を行うように指示がありました。

 

静脈注射が診療の補助の範囲になったことは知っています。

 

ですが、抗がん剤は劇薬でもあるため、不安が残ります。

 

どのように対処すべきでしょうか。

医師に自分の不安を伝え、患者さんに害を与えることを最小にするために、
どのような方法が良いかを話し合いましょう。

 

@ 静注が看護師の診療の捕助行為とされた背景

 

現場で医療をしていく際に、
静脈注射が診療の補助の範囲になったことを知っていたにも関わらず、
抗がん剤は劇薬のため不安が残るという気持ちを持ったことは、
とても大切なことです。

 

医療の現場では、このような、ちょっとした引っ掛かりを無視しないで、
事故の事前の防止策に役立てていくことが大切です。

 

医療安全の見地からは、
このような危険予知能力を高めることはとても重要であるといえるでしょう。

 

平成14年9月30日付の厚生労働省医政務局通知では、
「新たな看護のあり方に関する検討会」中間まとめの趣旨を踏まえ、
「医師又は歯科医師の指示の下に看護師らが行う静脈注射は、
保健師助産師看護師法5条に規定する診療の捕助行為の範疇として取り扱う。」
としています。

 

A相対的医行為と絶対的医行為の区別

 

医師の行う医療行為、看護師の行う看護行為は、
重なっている部分が多いです。

 

医師が行う医療行為には、
絶対的医療行為、診療の補助(相対的医行為)があり、
看護師が行う看護行為には、
療養上の世話、診療の補助(相対的医行為)があります。

 

つまり、診療の補助(相対的医行為)が重なっています。
そして、この診療の補助(相対的医行為)は、
医師が直接手を下さなくても、医師の指示の下、
看護師が行うことができます。

 

ですが、保健師助産師看護師法37条では、
「看護師は、・・・医師が行うのでなければ
衛生上危害を生ずる恐れのある行為をしてはならない」とありますから、
このような医療行為を看護師が行うことはできません(絶対的医行為)。

 

つまり、静脈注射は、
一律に診療の捕助行為となったという単純なものではありません。

 

求められるのは、医師自らが行うのでなければ
衛生上危害を生ずる恐れがあるのかないのかの判断です。

 

これは、包括的か個別的かという指示の内容、
看護師の力量、患者さんの容態、行為の危険度、
薬剤の種類などを考え、最終的に、その行為が、
当該患者さんにどの程度の危害を及ぼす可能性があるかを
見積もることが必要です。

 

そして、医師と看護師が共同で行う専門的判断に委ねられます。

 

B抗がん剤静注の指示を受けたときの対応のポイント

 

抗がん剤静注射の指示を受けたときの対応は、
持っている不安を医師に伝えることが第一です。

 

このケースの場合は、医師からそれだけの力量があると見込まれ、
実施の指示をされたのだと思います。

 

しかし、もっている不安を医師に伝え、
指示内容をより具体的にしてもらい、
場合によっては医師自らが実施する可能性について話し合いましょう。

 

この点については、
「静脈注射の実施に関する指針(日本看護協会)」を参考にしてください。

 

●「静脈注射の実施に関する指針(日本看護協会)」

 

レベル1: 臨時応急の手当てとして看護師が実施することができる。
レベル2: 医師の指示に基づき、看護師が実施することができる。
レベル3: 医師の指示に基づき、一定以上の臨床経験を有し、
     かつ、専門の教育を受けた看護師のみが実施することができる。
レベル4: 看護師は実施しない。