看護師のためのトラブルと法的知識

医師が処置を怠った場合の対応

入院中の患者さんの状態が、

徐々に悪くなっていることを主治医に報告しました。

 

ですが、何も対策が行われません。

 

報告したものの、治療がなされない場合、
看護師はどのように対応すればよいのでしょうか。

緊急な場合と考えられれば、再度主治医に説明をする、
ほかの看護師から説明をする、
病院管理者に報告し、管理者から主治医に説明をするなど、
事態の深刻さに応じて対応をすることが必要です。

 

@ ケースの分析

 

まず、いくつかの前提を検討してみましょう。

 

 1) 患者さんの状態が徐々に悪化しているのは確かなことか。
 2) 悪化しているのであれば、主治医がその事態を十分に理解しているか。
 3) 状態が悪化しており、それを主治医は理解しているが、
   対策をしないのではなく、具体的な治療をしないことを
   対策としているのではないか。

 

など、医師が対策をしないのはさまざまな場合があると考えられます。

 

医学的な高度な状況の判断によっては、
微妙な場合があります。

 

3)のような場合だと、医師とそれ以外のスタッフの判断が
違ってくることが少なくありません。

 

ですが、治療の必要性や治療の内容の判断の権限は、
基本的に医師に委ねられています。

 

これらの前提を踏まえ、その上で、
なお患者さんに対する看護師の医学的な判断が正しかった場合、
医師の裁量判断は小さくすることになります。

 

法的には、医師の治療の判断は、
専門的裁量行為に分類されます。

 

それは、何をしてもいい、あるいは何もしなくていいのではなく、
適切な裁量の幅があり、この幅を超えた場合は、
裁量権は小さくなります。

 

また、病院は、患者さんとの関係で治療契約を結んでいます。

 

ですから、適切な治療がされなければ、
民法上の「善良な管理者の注意義務」に反することになり、
病院側の債務不履行とみなされることになります。

 

 *善良な管理者の注意義務(善管注意義務)

 

民法644条には、「受任者は、委任の本旨に従い、
善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う」とあります。

 

民法644条に関連するもので、自分の財産に関する注意義務
(自己の物に対する義務といいます。)よりも、
より高度の注意義務といわれています。

 

医療の分野では、医療水準に従う義務と、
通常同じと考えられます。
A 医師が処置を怠った場合の対応の手順

 

看護師の判断が正しかった場合、
患者さんにとって緊急な場合であると考えられます。

 

ですから、医師が処置を怠った場合は、以下のように対応すると良いでしょう。

 

 1) 再度、主治医に説明をする。
    ほかの看護師、立場を変えて師長から説明をする。

 

 2) 病院管理者に報告し、管理者から主治医に説明をする。
    それでも従わない場合は、ほかの医師に主治医を代わってもらう。

 

このように対処する方法があります。

 

また、病院全体としては、ほかの病院への転院を考える場合もあるでしょう。

 

たとえば、具体的な対応がなされずに、
患者さんが危機的状況に陥った場合、
看護師が応急的な治療をしても、
場合によっては「緊急行為で、違法性に問われない。」
とされることもあります。

 

B 問題が起きる原因

 

このケースのような場合は、
医師の業務過剰などが原因となっていることもあります。

 

また、日ごろから医師とのコミュニケーションがうまくとれていない場合も、
医師が看護師からの報告に対して素直になれず、
かたくなになることがあります。

 

また看護師が患者さんの治療に積極的に参加していないと、
医師の考えがわからないこともあります。
そして、自信をもって自分の意見を、いうことができないこともあるでしょう。

 

日ごろから医師との意思疎通や、
治療への積極的な参加に努めることが必要です。

 

看護師の危機意識が主治医に共有されず、
患者さんが不幸な転帰をたどることもあります。

 

医療現場では、コミュニケーションエラーが
患者さんの安全に直結します。