看護師のためのトラブルと法的知識

リスクの高いスタッフへの対応

実務経験2年で、リスクの高いスタッフがいます。

 

時間をかけても成長すればよいと思う反面、
事故を起こす危険性が高いのであれば、
看護職から事務職などへの配置転換をすべきかとも考えています。

 

法的な視点からは、どのように考えるべきでしょうか。

まず、本人に、自己(セルフ)リスクマネジメントをする機会を設け、
段階を経て成長を促します。

 

その上で、病院として患者さんへの安全管理義務履行の視点から、
やむをえないと判断した場合は、
いったん職場の離脱を検討します。

 

@ 過失を犯しやすいグループ(過失的人格態度)

 

失敗をしてもお皿を割る等、
取り返しの付くようなものの場合は、お金や愛嬌で済みます。

 

しかし、人の生命や安全に関わるような場合は、問題になります。

 

たとえば、交通事故を起こしたときに罰を与えても、
運転をすると事故を起こす過失のリピーターが稀にいます。

 

このような場合は、やむを得ず社会防衛の見地から、
自動車運転から離す、つまり免許を与えない、
運転業務をさせないということも考えます。

 

過失を繰り返してしまう一群を、
法学上「過失を犯しやすいグループ(過失的人格態度)」と分類します。

 

この「過失を犯しやすいグループ(過失的人格態度)」は、
刑事政策上、矯正がとても難しいといわれています。

 

A 医療の現場におけるリスクの高いスタッフへの対応

 

医療の現場では、個々の看護師が患者さんに配慮をするだけではなく、
医療管理者(病院管理者)は、
患者さんとの診療・入院契約(法律上は準委任)を根拠とし、
患者さんの安全に配慮をする義務を負っています。

 

したがって、安全への配慮がうまくできない看護師を雇い、
その看護師が事故を起こした場合には、
民法715条等により、管理者にも責任が生じます。

 

 *準委任

 

  委任契約は、本来法律行為に関する事務を委ねる契約をいいます。
  しかし、民法656条により、法律行為以外の事務を委ねる場合を、
 準委任契約といいます。
  診療や入院契約は、患者さんは医師らに法律行為(典型的には契約)
 以外の事実行為を委ねるので、
 通常はこの契約類型といわれています。

 

  準委任には、民法643条から655条の「委任の規定」が準用されます。
  受任者は、事務の遂行に「善良な管理者としての注意義務(644条)」を有します。
  「安全配慮義務」は、このひとつの現れです。

 

このケースの場合は、患者さんの安全が脅かされる事態について、
予見の範囲(考えられる範囲)であるため、
その原因を取り除く、つまり回避することが必要になります。

 

ですが、人の成長は未知数であり、
ひとつのミスが教訓隣、経験を重ねるにつれて
成長する人がいることも確かなことです。

 

単に、看護の手順を知らない未熟性のためのミスであれば
学ぶことによって改善されることもあります。

 

このケースの場合は、病院の管理上、
「可変可能な看護師を、
現在ミスをしやすいという理由だけで、
職務や職場から離すことが、
患者さんへの安全配慮義務の履行として必要か。」
ということを考える必要があります。

 

Bリスクの高いスタッフへの対応のポイント

 

現場として、リスクの高いスタッフへの対応は悩むところです。

 

もう一度、以下のような手順を踏んでみてはいかがでしょうか。

 

 1) 当該看護師の今までのミスを責めるのではなく、
   分析を促し、自らがミスを犯しやすいことを本人に自覚させる。
    また、ミスを犯さないようにするためには、
   自らがどのような手順を踏むことが必要かを理解させるように支援する。
    「自己(セルフ)リスクマネジメントの心得」をつくってもらう。

 

 2) 職場でも、当該看護師の行動について、お互いに声を掛け促す。

 

 3) それでも難しいと考える場合は、
   本人としっかり話をしたうえで、
   できれば期間を区切って暫定的に今の職場を離脱させ、
   ほかの職場から看護職のリスクマネジメントを外から見る機会を与える。
    他職種での学びをたいせつにしてもらい、
   再び「現場復帰」をするというプログラムを選ぶ。

 

このような手順を踏むことで、
当該看護師が成長するためのプログラムを
みんなで協力してつくるものだという思いが
その人に伝わることによって、
真の学びの態度が付くのではないでしょうか。