看護師のためのトラブルと法的知識

突然、勤め先が廃院になってしまったときの対応

勤めている病院が急に廃院となり、

解雇を申し渡されました。
労働者としての職員の権利や、
患者さんたちはどのように扱われるのでしょうか。

法律専門家に相談し、
自身の労働者としての権利を主張することが必要です。

 

また、残された患者さんのケアの充実のためにも、
最大限の努力を求めることが必要ではないでしょうか。

 

@ 病院の廃院問題

 

近年、報道でも、病院が廃院されるというものが
目に付くようになっています。

 

1996年の厚生省の非加熱血液凝固因子製剤による
非血友病HIV感染に関する調査でも、
廃院している病院が数多くあります。
そして、投与状況を把握できないことにより、
大きな社会問題となりました。

 

病院経営は、現在の医療費等の締め付けや、
患者の医療行動の変化、
経営者の経営上の問題などを背景とし、
地元での評判の悪化や低下、
特に医療事故などが引き金となり、
経営が圧迫していることによるものがあると考えられます。

 

また、近年は、研修医制度や
医局の医師の引き上げに伴う廃院も問題になっています。

 

ですが、このような場合、経営者は事情をオープンにせず、
急遽廃院を決めて、それについてアナウンスすということがしばしばあり、
このことが混乱に拍車をかけています。

 

そして、勤めている職員や、患者さんに大きな影響を及ぼします。

 

廃院した病院を系列病院に組み入れることもありますが、
その場合もやはり混乱を招きます。

 

A 職員は解雇

 

病院が廃院するということは、
職員にとっては、仕事の場、職場を失うということになります。

 

病院が廃院となり、解雇を申し渡された場合は、
勤めている職員、つまり、医療従事者は、
憲法27条以下労働基準法、労働組合法等により「労働者」ですから、
労働法上の権能を有します。

 

使用者は、労働基準法20条1項により、その人の雇用予定日数にもよりますが、
通常は30日前に予告をしなければ、
30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払うことが必要で、
そうでなければ解雇することはできません。

 

整理解雇に当たるのであれば、以下の判例上で確立している
いわゆる「整理解雇の4要件」というものを満たさない場合は、
解雇権の乱用として無効となる可能性もあります。

 

 ●整理解雇の4要件(改正労働基準法)

 

 憲法27条には、労働者の権利義務の規定があります。
 2004年1月1日から改正された労働基準法18条の2によると、
 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上
 相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして
 無効とする」とされています。
 これを整理解雇に当てはめたものが、
 以下の「整理解雇の4要件」です。
 また、改正労働基準法では、89条1項3号で、
 就業規則に「退職に関する事項(解雇の事由を含む)」を
 記載することが義務付けられています。

 

 ●整理解雇の4要件とは

 

 1) 人員削減の必要性があること。
 2) 解雇を回避するための努力義務が尽くされたこと。
 3) 解雇される者の選定基準および選定が合理的であること。
 4) 解雇手続き自体も妥当であるかどうか。

 

 

病院自身が倒産(廃院)するような場合は、
職場復帰はかなわず、往々にして泣き寝入りになります。

 

この点は、地域の弁護士等が行っている
労働法律相談に行き、対応すると良いでしょう。

 

B医療の拒絶

 

病院が廃院するということは、
患者さんにとって治療を受ける場がなくなるということです。

 

病院が突然廃院になることによって、
迷惑をもっとも被るのは、治療を受けている患者さんです。

 

患者さんと病院との間では、
診療・入院契約(準委任)を締結しています。

 

委任契約では、民法653条により、
一方の消滅は契約の終了原因とされていますから、
病院の廃院は契約を終了させることになります。

 

ですが、医師は、応召義務(招・需)、
請われた場合には、医師法19条の
「医療行為を拒むことはできない」を有しますから、
もし、当該病院が廃院するのであれば、
病院側には、患者さんに適切な病院を紹介するなどの転院義務があります。

 

また、都道府県への届出が必要になると共に、
医療機器の廃棄が必要です。

 

ですから、病院が廃院となるときには、
医療従事者としては、自身の労働者としての権利を守りながら、
患者さんたちへのアフターケアを十二分に尽くすことが必要です。

 

医療に対する患者さんの信頼を維持するためにも、
不幸にも廃院が避けられない状態であったとしても
このような対応が大切な作業となります。