看護師のためのトラブルと法的知識

身だしなみの規則と個人の自由

「茶髪」を禁止している病院があります。

 

これに反する新人看護師に身だしなみを注意したところ、
「個人の自由の侵害」と反論されてしまうということもあるようです。

 

「茶髪禁止」は、個人の自由の侵害に当たるのでしょうか。

茶髪禁止規定の趣旨を、看護師の観点からだけでなく、
患者さんの観点も入れて話し合い、
一つ一つ丁寧に考えるようにすると良いでしょう。

 

@ 病院での服装規定

 

施設での看護師の服装規定を見てみると、
たとえば、以下のような規定を設けている病院が多いようです。

 

・装飾品の規定

 

 ピアス、ネックレス、マニキュア、ペディキュアの禁止。
 結婚指輪以外の指輪禁止。

 

・頭髪の規定

 

 肩より長い場合は髪を縛る。
 縛ってもそのままたらしていること(ポニーテールなど)は不可。
 ネット等でまとめるか、お団子型にして留める。
 髪留めに使うものは黒や茶などの指定色に限る。

 

・その他の規定

 

 ナースキャップの廃止。
 サンダル廃止。
 ICUなどでの履物の履き替え廃止。

 

このようなものがあり、看護師の服装については
病院によっても差がありますが、多くの制約や制限があります。

 

医師法によると、
医療は、医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき、
および医療を受ける者の心身の状況に応じて
行わなければならないとされています。

 

また、病院は、傷病者が、科学的でかつ適正な診療を受けることができる
便宜を与えることを主たる目的として組織され、
かつ、運営される必要があるともしています。

 

このようなことから、看護師の服装についての規定の当否も、
この趣旨を一つ一つ丁寧に考えていく必要があるでしょう。

 

そして、この問題は、法的に憲法13条の
「個人の自己決定や幸福追求権」の制約の問題として
捉えることができますが、
結論に大きな差異はありませんし、議論が難しくなるため、
あえて触れないように触れないようにしていることが多いようです。

 

A 個人の自由の侵害と反論された場合の対応手順

 

病院の身だしなみに関する規定には、
衛生的な観点からの規定、
不測の事態を防ぐための規定、
患者さんとの信頼関係を基礎とした業務であるという観点からの規定
などがあります。

 

1) 衛生的な観点からの規定

 

衛生的な観点からの規定とは、
主に患者さんに感染などの危害を与えないようにするためのものです。

 

これには、エンビデンスがあるものもありますが、
必ずしも明確なエンビデンスがない場合であっても、
院内感染などに対する予防的な観点から設けられているものもあります。

 

ナースキャップの廃止や、
ICUでの履き替え禁止等が「院内感染などに対する予防的な観点」に当たります。

 

2) 不測の事態を防ぐための規定

 

不測の事態を防ぐための規定とは、
医療者自身を守る場合も含まれます。

 

緊急時の避難の場合に脱げることがないように、
薬剤のアンプルや酸素ボンベ等の落下から
じかに足を傷つけることがないように、
サンダルの禁止等の規定が設けられています。

 

ピアスを禁止するのも、
不穏な患者さんとの対応において、
看護師や患者さん自身を傷つけないための規定です。

 

3) 患者さんとの信頼関係を基礎とした業務であるという観点からの規定

 

医療は、患者さんへのサービスの提供、
信頼関係を基本とした業務です。

 

ですから、ケースのような「茶髪」が、1)や2)に
該当すると言うようなことはないとしても、
高齢の患者さんでは特に、茶髪について嫌悪感を持つ人もいるかもしれません。

 

また、医療施設では、看護師の身だしなみについて
管理の権限があるという理屈もあります。

 

茶髪の程度によっては許される場合もあり、
時代の移り変わりによる考え方や
感じ方の変化もあります。

 

むやみに禁止をすることによって、
看護師の持つ利益の侵害となることも考えられます。

 

ですから、一方的に「禁止!」というのではなく、
禁止をしている趣旨を、その看護師の目からだけでなく、
患者さんなど医療を利用する人からの観点も共有しながら、
話し合っていくことが必要だと思います。

 

●看護師の身だしなみの規則と個人の自由に関する法律

 

*医療法1条の2(中略)

 

医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし…
医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき、
および医療を受ける者の心身の状況に応じて行われる。

 

*医療法1条の5(中略)

 

この法律において「病院」とは・・・
20人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいう。

 

病院は、傷病者が科学的でかつ適正な診療を受けることができる
便宜を与えることを主たる目的として組織され、
かつ、運営されるものでなければならない。