看護師のためのトラブルと法的知識

透析中に穿刺針が外れた

腎透析中に、患者Mさんのシャント穿刺針がはずれ、

出血しました。

 

幸い輸血が必要になるような事態には至らずにすみましたが、
それ以来、患者のMさんは、担当の看護師Yに不信感を持ち、
看護師Yも穿刺針が外れたことが大事故や訴訟につながるのではと
不安を抱えています。

 

過去にこのような事例で裁判になったことはあるのでしょうか。

透析関連の裁判事例はあります。
また、今後、このケースのようなことが裁判になることも予想されます。

 

@ 透析関連の裁判事例

 

平成12年、千葉県のある病院で起きた透析中の
空気塞栓による死亡事故を契機とし、
透析事故の再発防止は急務となっています。

 

また、今までに、透析中に穿刺針がはずれたことによる
大量出血の責任を問うという裁判や訴訟はないようですが、
透析そのものから生じた事故は多数報告されていて、
今後裁判になることも十分予想することができます。

 

今まで、透析関連で起こされた裁判例としては、
以下のようなものがあります。

 

・徳島地裁平成14年7月5日判決

 

透析中に結核性髄膜炎を感染した

 

・広島高裁松江支部平成13年11月28日判決

 

緑膿菌が透析液を解して感染し、腹膜炎を起こした

 

 * インターネットを使用した判決原文の取得方法

 

 1) 裁判所のURL(http://www.courts.go.jp/)にアクセスします。
 2) 「判例情報」をクリックします。
 3) 「最近の主な最高裁判決」、「最高裁判所判例集」、
   「高裁判例集」、「下級裁主要判例情報」等が出てきますので、
   「最近の主な最高裁判決」をクリックします。

 

 4) 「最近の主な最高裁判決」をクリックすると、
   過去数ヶ月程度のものについては原文が出てきます。
    また、「最高裁判所判例集」のページでは、
   判例を検索することができます。
    医療関係訴訟は、事件名を「損害賠償」にしましょう。

 

 5) 「最高判例集」と「下級裁主要判例情報」では、
   キーワード検索することができます。
    たとえば「透析」などと入れると、
   透析関係の判例を見ることができます。

 

 

A透析事故の原因

 

かつては、透析事故といえば「出血・エアー混入・透析液異常」
とされていました。

 

ですが、先ごろ行われた透析事故の実態調査によると、
重篤なものは「抜針・回路遮断・除水ミス」になっていて、
事故の様相が時代によって変わっています。

 

これは、より精密度の高い器械の導入が、
エアー今夕等の事故を減少させた反面、
回路遮断などの事故を増加させているために起きていると考えられます。

 

抜針による大量出血は、古くから透析における
典型的な重篤事故の原因になります(全体の3割程度)。

 

このケースの例では、裁判になるというようなことはならず
患者さんも大量出血になるようなことはなかったようですが、
「事故から学ぶ」姿勢は常に必要です。

 

B 透析事故対策のステップとは

 

透析事故を回避するためには、
透析事故対策の3ステップを学ぶことが必要です。

 

透析事故対策のステップは、厚生労働省が策定した
「透析医療事故防止のための標準的透析操作マニュアル」で指摘されている
内容を踏まえ、考えることが大切です。

 

「透析医療事故防止のための標準的透析操作マニュアル」

 

@ 施設の規模
A 対象となる患者背景
B スタッフの経験・熟練度
C 保有する設備等

 

透析事故対策のステップ

 

・ステップ1

 

まず、@施設の規模、C保有する設備等から、
施設ごとに透析操作のマニュアルを作成する必要があります。
院内の安全委員を中心に考えていきます。

 

・ステップ2

 

Bスタッフの経験・熟練度からすると、
看護師個々人が、自らの経験や能力を分析し、
自分が陥りやすいミスを意識し、自らの簡易マニュアルを
作成することが必要になります。

 

自分なりにミスをしないようにするための
「心がけ」を持つということです。

 

・ステップ3

 

A対象となる患者背景を踏まえ、
Mさんとこの事故を共有することが肝心です。

 

透析は、通常の医療行為と菜っことなる
長い「透析時間・期間」を経ることが必要です。

 

また、事故後も患者さんは透析を受け続けなければなりません。

 

今後のMさんの透析を安全で、快適なものにするためには、
なによりもMさんの理解と協力が必要です。