看護師のためのトラブルと法的知識

新生児連れ去り事件への防犯体制

新生児の連れ去り事件が起きたことがあります(2006年1月仙台市の病院)。

 

医療機関の防犯体制はどのようにすればよいのでしょうか。

 

また、病院の責任はどうなるのでしょうか。

新生児が親の管理下にある場合と否とで分けて考えます。

 

@ 新生児連れ去り事件の背景

 

2001年にも、鳥取県米子市の病院で新生児が連れ去られる事件がありました。

 

家族や地域に開かれた病院を追求してきたことにより、
防犯体制は後手になり、
病院はいろいろな場面で外敵にさらされるようになっています。

 

2006年1月仙台市の病院のケースのような誘拐だけでなく、
不審者が無断で病院に入って患者さんや病院の所持品を盗んだり、
入院患者さんへ暴行する事件も起きています。

 

病院や職員が病院外からの侵害(攻撃)から
患者さんを守る法的な義務を負うのか、
2006年1月仙台市の病院でおきたような
新生児連れ去り事件について考えてみます。

 

A 参考になる法律

 

病院はレストランやホテルとは異なり、
また、新生児と荷物(貴重品)も違いますが、
預かり者が盗まれた際の責任についての先例としては
レストランとホテルに多いので、
レストランやホテルでの例を参考にしてみます。

 

 1) フロントに預けた物が盗まれた場合

 

   フロントに預けた物が盗まれた場合は、
  商法593条、594条1項により、
  原則的に、ホテルやレストランの営業者は、
  客が被った被害を賠償する義務があります。

 

   ただし、「不可抗力」の場合は別です。

 

  *商法593条

 

   商品がその営業の範囲内において寄託を受けたるときは
  報酬を受けざるといえでも善良なる管理者の注意をなすことを要す。

 

  *商法594条1項

 

   旅店、飲食店、浴場その他客の来集を目的とする場屋の主人は
  客より寄託を受けた物品の滅失または毀損に付き
  その不可抗力によることを証明しなければ損害賠償の責を
  免れることを得ず。

 

  *商法594条2項

 

   客が特に寄託せざる物品といえども場屋中に携帯したる物品が
  場屋の主人又はその使用人の不注意によって滅失または毀損したるときは
  場屋の主人は損害賠償の責に任ず。

 

 

 2) ホテルの部屋で物がなくなった

 

   ホテルの部屋で物がなくなった場合は、
  商法594条2項により営業主や従業員の不手際が原因となった場合は、
  客が被った損害を賠償する義務があります。
B ケースの分析

 

新生児連れ去り事件の場合では、
新生児が母親の管理下におかれている場合は、
「ホテルの部屋で物がなくなった場合」に準ずることになるでしょう。

 

産後のために母親が、
自分で世話ができない場合もあります。

 

この場合でも不審者がうろついていたことを知りながら、
医療者がなんら配慮をしなかった場合は、
不注意と判断される場合があります。

 

ですが、新生児室のように、
新生児が保護者の手を離れ、
病院側が管理しているような場合は「フロントに預けた」場合に
準ずることになるでしょう。

 

新生児室で新生児の世話をしている場合は、
新生児の安全・保護は病院が引き受けていると考えられます。

 

外からの侵入を、病院が防ぐことができない場合、
つまり不可抗力でなければ責任を問われます。

 

とはいっても、新生児と物とはまったく異なります。

 

一応の考え方と理解し、参考程度にしてください。

 

C 病院の防犯体制

 

病院から新生児が連れ去られることは、
あってはならないことです。

 

ですが、病院は多くの人が出入りしますから、
管理者だけで対応することはできません。

 

また、地域の防犯は、
警察や第三者任せでは全うできない事柄でもあることから、
地域住民全員で担うことが必要です。

 

同じように、病院の防犯も、医療者や患者全員で担います。

 

形だけの防犯マニュアルを作るのではなく、
安全は医療者全員が担うという文化を創ることが大切で、
犯罪には断固たる姿勢で挑むことが大切です。

 

また、患者さんに対する安全配慮義務の観点からの
アプローチもあります。