看護師のためのトラブルと法的知識

労働者の職場環境管理(Quality of working life)とは

近年の医療経営や保険点数の変更によって、

医療の人手不足のしわ寄せが、現場、
特に臨床ナースに来ていると思います。

 

医療関連法の改正もこれを推し進めるものと思われます。

 

今後、臨床ナースとして、
このような大きな流れから自分や患者さんを守るために、
どのようなことに注意すればよいのでしょうか。

もっと自らの労働環境に関心を持つと良いのではないでしょうか。

 

@ 医療現場における看護師の労働

 

現在、医療の質や、医療安全の向上が強く叫ばれています。

 

ですが、そのほとんどが、既存の労働条件や実態を変えずに、
看護過程の手法を用い、転倒防止等の安全管理を行うというものです。

 

現状の労働条件を変えることなく、本当に、
これらのことが実現できるのでしょうか。

 

医療労働者、特に患者さんのケアを直接担当する看護職には、
以下のような特徴があります。

 

 1) わがままな患者さんや、疾患に、
   医療が対応できず不幸な転帰をたどるなど、
   緊張を強いられ、医療に不全感をもち、
   ストレスが大きいにも関わらず、
   医療者個人の思いはいったん置いて、
   患者さんへの対応は「笑顔でやさしくするように」とされる。

 

 2) チーム医療の中でケアを提供する、
   チームの調整という臨機応変な対応を
   求められることが多々ある。

 

 3) ケアの内容は、患者さんの状況や担当医師の判断によるので
   多様であり、個別的である。

 

 4) 患者さんへのかかわりは、医師と比べてスポット的ではなく、
   時間を共有しているので、必然的に勤務時間が長くなり、
   人員が少ない中、夜勤勤務を強いられる。

 

このような状況があるため、職場のしわ寄せが看護職に及ぶのは明らかです。

 

また、看護職が患者さんのケアに専従することができなければ、
医療の質と安全性が低下してしまうということは言うまでもありません。
A 国の政策

 

 厚生労働省は、善職種について、以下のような施策を実施しています。

 

2000年8月 事業場における労働者の心の健康づくりのための指針

 

2001年11月 脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書

 

2001年12月 職場における自殺の予防と対応(自殺予防マニュアル)

 

2002年2月 過重労働による健康障害防止のための総合対策

 

2004年8月 過重労働・メンタルヘルス対策のあり方に係る検討会報告書

 

(2006年に労働安全衛生法が一部改正されました)

 

2006年1月 今後の労働時間制度に関する研究会報告書

 

 ●2006年の労働安全衛生法のポイント

 

 1) 長時間労働者への医師による面接指導の実施
 2) 特殊健康診断結果の労働者への通知
 3) 危険性・有害性等の調査および必要な措置の実施
 4) 認定事業者に対する計画届の免除
 5) 安全衛生管理体制の強化
 6) 化学整備の清掃等の作業の注文者による文書等の交付
 7) 化学設備等の表示・文書交付制度の改善
 8) 有害物ばく露作用報告の創設
 など

 

B 重大な視点(QWL)

 

Aの国の施策を見てわかるように、
国は、労働が「過労死等の疾患や自殺・事故」に結びつくことを
防ぐことを主眼としています。

 

その前の段階である、労働者が
「生き生きとして労働するQWL:Quality of working life」には
直接関心を払っていません。

 

ですが、医療者が過労死や自殺に追い込まれることは言語道断です。

 

むしろ、その前段階で労働者のQWLが保証されていなければ、
医療者は日常の作業を十分にこなすことができないでしょう。

 

また、何よりも過重労働は、医療安全に大きな影響を及ぼします。

 

結果、患者さんにリスクを負わせてしまうことになるかもしれません。

 

アメリカでは、看護師のある一定の長時間労働が医療事故と
関連するという調査結果を報告しています。

 

このような問題は、労働安全衛生法や事業者の
安全配慮義務等の「法的な仕組み」だけでなく、
医療現場で働く労働者が求める環境要件や、
「患者さんを傷つけない」など
医療者の患者さんへの倫理義務の問題であるとわかります。

 

この問題は、職場でどうしていくのか、
どのように実現するかは、今後の課題となるでしょう。