看護師のためのトラブルと法的知識

家庭内暴力の疑いのある患者さんへの対応

40歳代の女性が、振戦の状態で救急搬送されました。

 

全身数十箇所に内出血斑があり、「家庭での暴力が原因では?」
と思ってたずねましたが、本人は否定し、
転倒した傷だと主張しました。

 

このように、家庭内暴力の疑いのある患者さんへの対応は、
どのように対処したらよいのでしょうか。

本人への医療上の処置を最重点としながら、
本人が再度傷つかないように、法律の趣旨にのっとり、
通告等を検討します。

 

@ 虐待の通報規定の整備

 

病院には、犯罪等の被害者である疑いのある
傷ついた患者さんがしばしば搬送されたり、
つれて来られたりします。

 

このような場合は、まず、当面のケアを行うことが大切です。

 

この場合のケアは、単なる身体的な治療だけでなく、
心のケアを行っていくことが大切です。

 

ですが、このケースのような患者さんは、
加害者である人の付き添いを受けていることが多く、
退院すると加害者の下に戻ることになっていることが多いです。
そして、被害を否定する場合が多いです。

 

医療者としては、まず、患者さんが安心して
発言することができる条件をつくることが必要です。

 

平成13年10月から「配偶者からの暴力の防止
および被害者の保護に関する法律(DV防止法)」の第3章
「被害者の保護」6条は、配偶者からの暴力を受けている者を発見したら、
配偶者暴力相談支援センターや警察官に通報するよう
努めなければならないことを規定しています。

 

この通称DV防止法をこの種の問題への道筋としてください。

 

 

なお、DV防止法は、配偶者からの暴行についての規定がされているものですが、
ほかにも、高齢者がケア従事者(家族など)から家庭で虐待を受けている場合、
年少者が親や養親などから家庭で虐待を受けている場合も大きな問題です。

 

このような高齢者や障害者に対しての虐待、
子供への虐待についても、以下のように法が整備されています。

 

この法によると、被害者が誰であれ、
虐待を受けた者を発見すると、
速やかに通報や届出をすることが必要となっています。

 

なお、この場合、いずれも守秘義務違反に問われることはありません。

 

患者さんのケアを最重点としながら、
患者さんが再度傷つくことがないような対応を検討しましょう。

 

●配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法
(平成13年4月13日法律第31号)

 

・配偶者からの暴力の発見者による通報等

 

6条 配偶者からの暴力(配偶者又は配偶者であった者からの
 身体に対する暴力に限る。以下この章において同じ。)を
 受けている者を発見した者は、その旨を配偶者暴力相談支援センター
 又は警察官に通報するよう努めなければならない。

 

2 医師その他の医療関係者は、その業務を行うに当たり、
 配偶者からの暴力に紆余って負傷し又は疾病に罹ったと認められる
 者を発見したときは、その旨を配偶者暴力支援センター又は
 警察官に通報することができる。その場合において、その者の
 意思を尊重するよう努めるものとする。

 

3 刑法(明示四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定
 その他の守秘義務に関する法律の規定は、前二項の規定により
 通報することを防げるものとして解釈してはならない。

 

4 医師その他の医療関係者は、その業務を行うに当たり、
 配偶者からの暴力によって負傷し又は疾病にかかったと
 認められる者を発見したときは、その者に対し、配偶者暴力
 相談支援センター等の利用について、その有する情報を
 提供するよう努めなければならない。

 

●児童虐待の防止等に関する法律
(平成12年5月24日法律第82号)

 

・児童虐待に係る通告

 

6条 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、
 速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所
 若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、
 都道府県の設置する福祉事務所若しくは
 児童相談所に通告しなければならない。     

 

2 前項の規定による通告は、
 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)
 第二十五条の規定による通告とみなして、
 同法の規定を適用する。

 

3 刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定
 その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定
 による通告をする義務の遵守を防げるもの解釈してはならない。

 

●高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律
(平成17年11月9日法律第124条)

 

・養護者による高齢者虐待に係る通報等

 

第七条 養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を
   発見した者は、当該高齢者の生命又は身体に重大な危険
   が生じている場合は、速やかにこれを市町村に通報しな
   ければならない。

 

2 前項に定める場合のほか、養護者による高齢者虐待を受けた
 と思われる高齢者を発見した者は、速やかに、これを市町村
 に通報するよう努めなければならない。

 

3 刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その
 他の守秘義務に関する法律の規定は、前二項の規定による通報
 をすることを防げるものと解釈してはならない。

 

・要介護施設従事者等による高齢者虐待に係る通報等

 

第二十一条 要介護施設従事者等は、当該要介護施設従事者等が
     その業務に従事しているよう介護施設又は要介護事業
     (当該養護施設の設置者若しくは当該要介護事業を行う
     者が設置する要介護施設又はこれらの者が行う要介護
     事業を含む。)において業務に従事する八日以後施設
     従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を
     発見した場合は、速やかに、これを市町村に通報しなけ
     ればならない。

 

2 前項に定める場合のほか、要介護施設従事者等による高齢者虐待
 を受けたと思われる高齢者を発見した者は、当該高齢者の生命、
 または身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを
 市町村に通報しなければならない。

 

3 前二項に定める場合のほか、要介護施設従事者等による高齢者
 虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、速やかに、これ
 を市町村に通報するよう努めなければならない。

 

4 要介護施設従事者等による高齢者虐待を受けた高齢者は、
 その旨を市町村に届け出ることができる。

 

5 第十八条の規定は、第一項から第三項までの規定による通報
 又は前項の規定による届出の受理に関する事務を担当する部局の
 周知について準用する。

 

6 刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、
 第一項から第三項までの規定による通報(虚偽であるもの及び過失
 によるものを除く。次項において同じ。)をすることを妨げるもの
 と解釈してはならない。