看護師のためのトラブルと法的知識

医療事故の内部告発をするには

医療事故を周りが隠す方向にもっていこうとしています。

 

事実を明らかにしたいときには、
どこへどのように話をしに行けばよいのでしょうか。

公益通報者保護法の要件と照らし合わせながら、
事案の重要性・公益性等を勘案し、判断しましょう。

 

@ 公益通報者保護法

 

労働者・従業員は企業の
犯罪行為を知ることができる立場にあります。

 

いっぽうで、事業者の指揮命令に従い、
誠実義務や秘密保持義務等を課せられ、
内部告発者は懲戒処分などの
不利益な処分を受けることがあります。

 

そこで、要件に従った適切な通報については、
通報者が不利益な処分を受けないよう規定しています。

 

それが、公益通報者保護法
(平成16年6月18日交付、平成18年4月1日施行)です。

 

 1) 通報の中心的なものは、「個人の生命、身体、財産その他の
   利益の保護にかかわる「法律」に規定する罪の犯罪行為の事実
   或いは行政処分の対象となる違法行為」です。

 

    この法律には、「刑法」、「医療法」、「薬事法」、
   「医師法」、「保健師助産師看護師法」、「介護保険法」が
   含まれます。

 

    しかし、不法行為や債務不履行(民事法違反)、
   努力義務違反(不当な行為)は含まれません。

 

 2) 通報先別の要件(3条)

 

    共通要件として「不正の利益を得る目的、
   他人に損害を加える目的でないこと」に加え、
   通報先によって特別要件が定められています。

 

    外部通報は事業者に評判などでダメージが生じるので、
   事業者内での自主的対応を期待し、内部よりも行政、
   行政よりも外部と言うように、要件が厳しくなっています。

 

 ・1号通報(事業者内部への通報)

 

  通報対象事実が生じ、
 又はまさに生じようとしていると考える(相当性の要件は不要)。

 

 ・2号通報(行政機関への通報)

 

  通報対象事実が生じ、
 又はま賛美生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある。

 

 ・3号通報(事業者外部への通報)

 

  通報対象事実が生じ、
 又はまさに生じようとしていると信じるに足りる相当の理由があり、
 かつ、以下のイ〜ホのいずれかに該当する場合、
 その者に対し通報対象事実を通報することが、
 その発生又は被害の拡大を防ぐために必要と認められます。

 

 イ: 事業者内部・行政機関に通報すると解雇その他不利益な取り扱いを受ける。

 

 ロ: 事業者内部に通報すると証拠などを隠滅される。

 

 ハ: 事業者内部・行政機関にも通報しないことを要求された。

 

 ニ: 事業者内部に通報しても調査が行われない。

 

 ホ: 個人の生命または身体に危害が発生し、または発生する急迫した危険がある。

 

 

 *公益通報者保護法3条、4条、5条

 

  公益通報をしたことによる以下のような不利益取り扱いを禁止しています。

 

  「降格」、「減給」、「嫌がらせ」、「もっぱら雑務に従事させる」、
 「退職年金の差し止め」、「派遣労働者の交代を求める」

 

A 事実を明らかにしたいが周りが隠蔽しようとしているときの対応

 

まず、共通要件に反していないかどうかを確認します。

 

また、医療事故には、過失に基づくものと送ではないものがありますが、
専門職から見て、その事故の原因として注意義務を欠いていると判断
できる場合や、その証拠を隠滅しようとする可能性がある場合は、
刑法211条の「業務上過失致死傷」、刑法104条の「証拠隠滅」に
あたる可能性があるため、通報対象事実になり得ます。

 

しかし、すぐに外部機関に通報するのではなく、
リスクマネージャーや看護部長、院長等の内部の責任者に通報するか、
保健所といった行政機関で事足りるのか、
足りないのであればどのような要件を満たす必要があるのか、
通報にはどの外部機関(患者さん、患者さんの家族、弁護士が運営する
公益通報者支援団体、報道機関など)を選択するのかを考えます。

 

ただし、どの外部機関に通報するのかは、
通報までの要件を参照し、慎重に考えることが必要です。

 

そして、その過程で、過失の明白性、重大性、被害の大きさなどを
きちんと把握しておくことも必要です。