看護師のためのトラブルと法的知識

ナースコールやセンサーコールへの対応が遅れた場合

実際の看護の現場では、

ナースコールやセンサーコールが重なり、
すぐに対応できないこともあります。

 

そのような場合の、
コールへの対応の遅れによって起こりうる問題には、
どのようなものがあり、
どのような問題が起こる可能性があるのでしょうか。

ナースコールやセンサーコールへの対応が
遅れた場合に起こりうる問題は、
過失を構成する結果予見と、
結果回避の観点から検討してみましょう。

 

@ ナースコールに関する事故

 

医療事故情報収集等事業に基づく
日本医療機能評価機構が好評している報告書
(http://jcqhc.or.jp/html/accident.htm#med-safe)を読むと、
ナースコールに絡んだ事故が多く見られます。

 

ナースコールが鳴ったにもかかわらず、
ナースステーションにたまたま人員がいなかったため処置が遅れた、
アラームが鳴らなかった(電池切れ)等というケースが多くあります。

 

ナースコールは、患者さんが緊急と判断したとき、
医療者に援助を求めるサインです。

 

結果的に緊急性や必要性がない場合もありますが、
そのコールに適時、適切に対応しなければなりません。

 

それに対し、センサーコールは、
医療者側が患者さんの動きに対してあらかじめ危険を察知し、
即応するための手段です。

 

すると、一般論としては、
ナースコールよりもセンサーコールを優先することになります。

 

A 優先順位と過失

 

医療現場では複数の要望が重なり、
そのすべてを満たす人的・物的資源がないために、
優先順位をつけなければならないことがあります。

 

その典型が、トリアージです。

 

医療は、コスト面を考えなければ、
このような「重なり」に対しても
多くの人員を配置しておく等の対応ができますが、
実際は、「何ができて、何ができない。」、
あるいは「何をすべきで、何がする必要がない」
かの線引きはとても難しいです。

 

事実上、不足の事態にいつも対応することは不可能で、
法がそのレベルまで求めることになると、
結果責任を負うことと同義になってしまいます。

 

ですから、過失の構造から見ていくようにします。

 

過失は、弥彦神社事件判決の判例によると
「結果予見義務」と「結果回避義務」から成り立っています。

 

 *弥彦神社事件判決

 

  1956年1月1日午前0時半ごろ、新潟県の弥彦神社内で発生した
 大量圧死事件です。
  この裁判の判決(最高裁昭和42年5月25日)では、
 「過失の要件は、結果の発生を予見することの可能性と
 その義務および結果の発生を未然に防止することの可能性と
 その義務である。」とされ、 最高裁では宮司の有罪が確定されました。

 

 1) 結果予見義務

 

  当日の舞踊等患者の状態から、重症患者等が多ければ、
 コールの重なりが起こりうると予測できるでしょう。

 

  センサーコールを取り付けている患者さんが複数いる場合は、
 そのような恐れが高いといえます。

 

  もっとも、これも可能性の範囲です。
  実践的には複数の医療者で考え、
 「高」、「中」、「小」のレベルを
 暫定的にでも判断することからはじめてみませんか?

 

 2) 結果回避義務

 

  結果予見を行ったうえで、
 どのような結果回避措置をとるべきかは出てきません。

 

  コールの重なりの可能性が「高」と判断した場合は医療管理者に相談し、
 人的な充足を求めることが必要でしょう。
  「中」と判断した場合は、それが起こった場合の応援体制について
 検討しておくことが必要です。

 

 3) 現場対応

 

  不幸にも複数のコールが重なった場合は、
 その優先順位の判断が必要です。

 

  心配の異常であれば、転倒の危険などよりも
 順位が高いことは明らかです。
  あらかじめ、コールに対する優先順位の決め方を、
 その時々のスタッフで検討しておくと良いでしょう。