看護師のためのトラブルと法的知識

看護師の権限

横浜市内の産科病院で、看護師が内診をしていたことが問題になりました。

 

なぜ、看護師が内診をしてはいけないのでしょうか。

保健師助産師看護師法・通達を十分に理解した上で
スタッフの適正な配置を考えることが必要です。

 

@ 看護師の内診行為が問われた背景

 

横浜市内の産科病院で、2006年8月、
看護師の出産時における内診行為が、
保健師助産師看護師法違反として大きく報道され、
問題になりました。

 

この問題の背景事情には、以下のようなものがあります。

 

1) 医師と助産師の関係。
2) 医師と看護師の関係。
3) 助産師と看護師との関係に関する法的な権限の解釈の問題。
4) 産科病院の方針や助産師の人員確保の問題。

 

A 保健師助産師看護師法と通達

 

助産師や看護師の業務内容を定めた保健師助産師看護師法では、
保健師助産師看護師法3条、及び保健師助産師看護師法30条により、
「助産」を行うことができるのは、
医師と助産師だけであると定めています。

 

2002年の通達では、厚生労働省は、
「内診はお産が正常に進んでいるかを判断する「診断行為」のため、
看護師の業務の範囲外である。
今後、母子に異常が起こる可能性も予測しなければならず、
判断を誤れば命に重大な影響を及ぼしかねない。」と説明しています。

 

ですが、日本産婦人科医会では、
「内診は「助産」ではなく、看護師にもできる
「診療の補助」にあたる」と解釈してきました。

 

この点に、法の解釈をめぐっての食い違いがあり、
それが放置されてきたため、このような問題が生じたのです。

 

保健師助産師看護師法では、「保健師」、「助産師」、「看護師」、
「准看護師」の資格要件や、その業務の範囲などを定めたものです。

 

そして、看護師としては、まずもって知っておくことが必須の法律です。

 

業務に危険を伴うため、一般人には許されていない事柄についての
一定の要件を満たした場合に、
免許を与えて許すこととしています。

 

つまり、保健師助産師看護師法は、
「免許を与える要件」と
「免許を与えない、ないしは免許を失効させる事由」のほか、
どのような業務ができ、どのようなルールに基づいて、
その業務ができるかを定めています。

 

そして、医療者は、常に自分の権限を基礎付ける保健師助産師看護師法に
注意を払う必要があります。

 

ただし、医療の現場では医師、助産師、看護師が
適正に配置されているとは限りません。

 

そのために、このケースのような事態が生じたのです。

 

実効性を持った法とするためには、
スタッフの適正な配置という当然の条件が必要であることを
考えさせられるケースです。

 

●保健師助産師看護師法による保健師・助産師・看護師・准看護師ができること

 

<保健師>

 

○独自の判断でできるもの

 

・通常の保健指導(2条)
・臨時応急の手当て(37条)

 

○主治医等の指示がなければできないもの(相対的医行為)

 

・傷病者の療養上の指導(35条)
・診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をし、
その他医師又は歯科医師が行うのでなければ
衛生上危害を生じる恐れのある行為(37条)

 

<助産師>

 

○独自の判断でできるもの

 

・助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の
保護指導を行う(正常な場合)(3条、38条)

 

・臨時応急の手当(37条)
・へその緒を切り、浣腸を施し、その他助産師の業務に
当然に付随する行為(37条)

 

○主治医等の指示がなければできないもの(相対的医行為)

 

・診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をし、
その他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を
生ずるおそれのある行為(37条)

 

<看護師>

 

○独自の判断でできるもの

 

・傷病者もしくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助(5条)
・臨時応急の手当(37条)

 

○主治医等の指示がなければできないもの(相対的医行為)

 

・診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をし、
その他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を
生ずるおそれのある行為(37条)

 

<准看護師>

 

○独自の判断でできるもの

 

・臨時応急の手当(37条)

 

○主治医等の指示がなければできないもの(相対的医行為)

 

・医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて傷病者
若しくはじよく婦に対する療養上の世話・診療の補助(6条)