看護師のためのトラブルと法的知識

事例発表と患者さんへの配慮

個人情報についてですが、

研修(現任教育)で事例検討・事例研究発表を行う場合に、
患者さんから承諾を得て記録に残す必要があると思います。

 

ですが、病院内に倫理委員会もなく、
倫理的な意識も低いという場合は、どのように対応すればよいのでしょうか。

なるべく匿名化し、本人が特定化される可能性を払拭できていない場合は、
本人の同意を得るというルールに則るようにします。

 

@ 個人情報保護法の施行の前後

 

個人情報保護法が全面施行されたのは2005年4月です。

 

法律施行の前でも、患者さんのプライバシーを侵害する事態があれば、
法的に責任を問われていましたから、
この個人情報保護法の施行による
標記の問題についての取扱いが変わることはありません。

 

しかし、法が成立すると、国民、患者さんの関心は、
いやがうえにも高まり、事例研究の発表が問題視されることもあるでしょう。

 

現に、稀な症例の報告を掲載した学会での論文発表が、
偶然、患者さんのご家族に知れ、患者さんの顔写真は
マスキングしていたものの、
病院名や病名等他の情報から患者さん本人だとわかり、
法的に問題視されたという事例もあります。

 

医療従事者としては、この問題に対し、
ルールをもって考えていく必要があるでしょう。

 

また、臨床における医療個人情報に則して
2004年12月に厚生労働省によって策定された
「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのための
ガイドライン」も参考にしていきます。

 

A 法とガイドラインによるルール

 

●匿名化

 

まず、匿名化についてですが、
「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのための
ガイドライン」は、「当該個人情報から、当該情報に含まれる氏名、
生年月日、住所の記述等、個人を識別する情報を取り除くことで、
特定の個人を識別できないようにすることをいう」と定義しています。

 

●顔写真

 

顔写真については、「一般的には目の部分にマスキングすることで
特定の個人を識別できないと考えられる。なお、必要な場合には、
その人とかかわりのない符号又は番号を付すこともある」としています。

 

 *「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのための
  ガイドライン」

 

  2004年12月24日にまとめられたものです。
  個人情報保護法にのっとり、個人情報を取り扱うすべての人が、
 個人情報の重要性を十分認識し、それを適正に取り扱うことを
 目的としたガイドラインです。

 

  このガイドラインには、個人情報保護法の内容と医療・介護の
 特性を踏まえ、厳しく定められています。

 

このように、匿名化をしたり、顔写真のマスキングをしたとしても、
事業者内で医療・介護関係の個人情報を利用する場合に、
他の情報と照合することで特定の患者さんを識別できてしまうことも
考えられます。

 

そこで、「当該情報の利用目的や利用者等を勘案した匿名化を行う
必要がある。また、当該利用について本人の同意を得る等の対応も
考慮する必要がある。」としています。

 

また、「特定の患者・利用者の症例や事例を学会で発表したり、
学会誌で報告したりする場合は、氏名等を消去することで
匿名化されると考えられるが、症例や事例により十分な匿名化が
困難な場合は、本人の同意を得なければならない」と定めています。

 

さらに、日本外科学会等の関連学会でも、
「症例報告を含む医学論文及び学会研究発表における患者プライバシー
保護に関する指針」を出しています。

 

この「症例報告を含む医学論文及び学会研究発表における患者プライバシー
保護に関する指針」では、
「患者個人の特定可能な氏名、入院番号、イニシャル、または
呼び名は記載しない。」、「患者の住所は記載しない。ただし、
疾患の発生場所が病態などに関係する場合は、県名などある程度まで
記載しても良いとしています。」などと定めています。

 

このような配慮をしても、個人が特定化される可能性がある場合は、
「発表に関する同意を患者さん自身、又は遺族課題離任、小児では
保護者から得るか、倫理委員会の承認を得る。」としています。

 

そして、検討の過程や患者さんの同意は、記録に残しておくことが必要です。